薬事法違反にあたる誇大広告や体験談を掲載した企業が調査を受けたり、逮捕されたりといったニュースを見聞きする機会が増えてきました。医薬品のみならず、化粧品に関しても薬事法が適用されます。ここでは、薬事法では「肌に関するもの」の効能効果表現としてどのような項目が認められているかに言及するとともに、実際のスキンケア用品における効能効果の表示の特徴についても考察してみます。
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数多くの化粧品が販売されている時代、その効能も実に多くの種類があるように思えますが、実は薬事法のガイドラインにおいて認められている効能効果に関する表現は、56種類です。効能は、どのような部位に使用するかに応じてリストアップされています。
具体的には、頭皮や毛髪に関連するもの、肌に関するもの、爪に関するもの、唇に関連するもの、歯や口に関連するものの5つに分類されています。その他の項目として、「芳香を与える」という効能の表示が認められています。
薬事法で定められている「肌に関するもの」についての効能効果は、実に20種類以上もあります。他の部位よりも圧倒的に多い項目数であると言えるでしょう。化粧品類のなかでも、使用する機会が特に多いスキンケア用品が、誰にとっても安心・安全に使えるものであるように、その効能が細かく規定されているのです。
肌質改善に関する効能表現としては、「肌のキメを整える」「肌にはりを与える」「肌にツヤを与える」といった表現が挙げられます。「あせもを防ぐ」「日やけを防ぐ」といった予防をうたった項目もあります。「ひげを剃りやすくする」「ひげそり後の肌を整える」と、ひげそり関連のケアにも言及しています。
化粧水や乳液、美容液といったスキンケア用品を選ぶ際に、皆さんはどのようなポイントを重視して選んでいるでしょうか。薬事法で規定されている効能表現は、消費者のニーズに合うよう適切に定められ、改定されてきました。
「乾燥による小じわを目立たなくする」という表現は、日本化粧品工業連合会(粧工連)の要望が厚生労働省に認められたことで、2011年に薬事法に新たに追加され、記載が認められた効能表現です。欧米圏では、日本よりも早い時期から抗シワ効能をスキンケア用品に表示したり、広告に使用したりすることができました。
日本においても、シワ改善に関する効能効果が適切に表現されるようになり、消費者がより快適にスキンケア用品を選択できるようになったと言えるでしょう。
スキンケア用品において、薬事法に基づいて効能効果を記載する場合は、必ずしも薬事法の文言そのままを使用する必要はありません。意味が正しく通じるように、言葉を置き換えて表現することも可能です。しかしながら、化粧品のパッケージに記載する場合であっても、広告に使用する場合であっても、誤解を招く表現を使うことは厳しく禁じられています。
効能効果が明確に伝わり、違った意味に解釈できる表現を避けることが、化粧品メーカーには強く求められています。消費者に正しく効能が伝わる表現であれば、複数の効能を組み合わせて表記することもできます。例えば「皮膚の乾燥を防ぐ」という効能と「乾燥による小じわを目立たなくする」という効能を組み合わせて、「皮膚の乾燥を防いで、小ジワを目立たなくします」という表現にしても構いません。
薬事法では、化粧品メーカーに対して、商品のアピールポイントとなる効能表現に関するガイドラインを規定すると共に、デメリット表示を効能効果と同じぐらいの大きさで、分かりやすく併記することも求めています。スキンケア用品は、健康や美容にとってプラスになる可能性がある一方で、体質によっては合わない人もいるものです。
「全ての人にアレルギーが起こらないということではありません。」といったデメリットの表記をすることも、製品の特性を消費者に伝える上では欠かせないのです。
ハンドクリームは、冬場になると活躍の機会が増えるスキンケア用品ですよね。薬用ハンドクリームは、肌荒れや赤ぎれがしやすいといった悩みを抱いている人にとってのお助けアイテムです。子どもも含めて家族全員で安心して使えるハンドクリームを選びたいという場合には、パッケージの効能効果をしっかりチェックしてから選ぶことが大切です。
私は、先日ハンドクリームを新しく購入するためにドラッグストアを訪れました。売り場にずらりと並ぶハンドクリームのなかから、使いやすそうなものを選ぶために、それぞれのパッケージを丁寧に見比べてみた結果、効能や効果がひとつひとつ分かりやすく書かれていることに感心しました。
記載されている表現については、薬事法とまったく同じ表現という効能表現が比較的多く見受けられました。薬事法のガイドラインの効能表現と一致していた表現としては「皮膚をすこやかに保つ」「皮膚を保護する」「皮膚の乾燥を防ぐ」「肌をひきしめる」などが挙げられます。
薬事法の記載をもとにして、一部をより分かりやすい言葉に置き換えて書かれている効能もありました。例えば「かみそり負けを防ぐ」という表現は、薬事法では「ひげそり後の肌を整える」という効能にあてはまるものでしょう。
ハンドクリームのメインターゲットである女性は、かみそりを使用して、ひげを剃るのではなく、全身のムダ毛のケア等をすることが多いものです。
パッケージに書かれた表現の方が、女性にとってより親しみやすい表現になっているのではないか、と思いました。また、薬事法で「日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ」と書かれている効能については、薬事法の表記と同じ表現で記載されている商品もあれば、「メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ」と記載されている商品もありました。
「日やけによる~」という漠然とした表現を使うよりも「メラニンの生成を抑える」という表現の方が、消費者にとって訴える力が強い感じがするので、好んで使用されているのかもしれない、と思います。薬事法を守る姿勢は大切にしながらも、ユーザーにとって分かりやすく表現しようとする姿勢が伺えて好感を持ちました。
スキンケア用品の効能効果は、薬事法のガイドラインの規定に沿って表記されるものです。薬事法の規定通りに効能が表記されていることもあれば、薬事法の規定を守った上で消費者にとってより親しみやすく分かりやすい言葉に置き換えて表現されていることもあります。
効能効果をきちんと認識した上で、スキンケア用品を正しい用法で使うようにすることが大切です。